福田さんいわく「日本の"フリーター左翼"はこのまま続けばカッコいい」


「週刊SPA!」2007年10月30日号(扶桑社)の連載対談「これでいいのだ!」で、坪内祐三さんと福田和也さんが以下のような会話をしておりました。坪内さんが山形国際ドキュメンタリー映画祭にいったときの感想を述べたあとに続く会話です。

坪内 最初に映画祭に行ったのは1999年だから……8年前。そのときはさ、89年にベルリンの壁が崩壊して91年にソビエトが崩壊した後だから、「左翼は失敗しました」というムードがなんとなくあったんだけど、今回は、共産主義がダメになったと言っても、結局、そのあとにアメリカ的なグローバリズムが暴走して、弊害が見えてきたと。そうしたとき、「やっぱり左翼だってだめではない」という、左翼的なものの可能性を探るみたいな感じが、いろんな作品の通底音として流れていたよ。左翼というか、反体制というかさ。
福田 新しい形での左翼は、けっこう復活してますよね。例の批評誌『フリーターズフリー』とかもそうだし。あとなんだっけ、高橋源一郎が『週刊朝日』で書いてたけど、「オールニートニッポン」(ニートやフリーターに向けた、本人たちによるインターネットラジオ)とかね。ああいう形での復活はありますよね。昔の左翼みたいに教条的にならないで、いまのままずっともてば、カッコいいんだけど。昔の左翼みたいになっちゃうとね……。
坪内 最近のそういう動きに対して、昔の左翼が、「また俺たちの出番だ!」って、張り切ってるとも聞いたけど。
福田 でも、「丸山眞男を引っぱたきたい」とか言ってる限りは大丈夫なんじゃない? 朝日新聞社の『論座』6月号で、31歳のフリーターが「体制がひっくり返るためには、むしろ戦争が起こってほしい」と、若者の戦争願望を書いた文章を載せて、旧左翼陣営がショックを受けて、論争となったでしょ。ああいう感覚は、昔の左翼とはいれ合わない。旧左翼が信奉する丸山眞男を「引っぱたきたい」とか言ってる間はOKだと思う。
(「週刊SPA!」2007年10月30日号、125-126ページ)

まず、福田さんが赤木さんの言説に関心を持ち、こうして雑誌で紹介していることが興味深いです。まぁ紹介する文脈が、「若者の戦争願望」と「丸山眞男」であることについては、旧左翼陣営とあまりかわらないなあ、という印象です。また、『フリーターズフリー』とか「オールニートニッポン」というものを、福田さんが紹介してるのもおもしろかったっす。あと、上記の『論座』6月号はまちがいで、1月号ですね。